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  消化器内科  多田隈 奈津子  


 湿気の多いこの梅雨の時期に、皆様どうお過ごしでしょうか。
 梅雨から夏にかけては、食中毒の多い季節です。日本の食中毒の90〜95%は細菌性食中毒で、原因菌としては腸炎ビブリオ(魚介類に多い)が大半を占め、ほかに黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌などが一般的です。食中毒の原因のほとんどは細菌性で、原因菌が付着した食品・飲み物を摂取することによって起こります。

 食中毒で、多くの方が思い浮かぶのが、平成8年に全国的な規模で発生した腸管出血性大腸菌O−157ではないでしょうか。
 O−157は、潜伏期が4〜8日と長いため見つかり難く、更に感染力が非常に強く、他の食中毒の発生に必要な菌数の数千〜数万分の一(わずか100個程度)で発症し、人から人への二次感染も多いため、発症すると大きな被害となります。
 ただし、この細菌に感染してもすべての人が発症するわけではなく、発症及び重症化し易いのは感染者の約半数で、体力や免疫力の弱い子供やお年寄りです。
 O−157感染症の症状は、全く症状がないものから多くの場合は,頻回の水様便で発病します。さらに、激しい腹痛を伴い、間も無く血便となる事があり、これは出血性大腸炎と呼ばれます。また他の病原性大腸菌にはないベロ毒素を作り、この毒素によって腸壁がただれたり、腎臓や脳が侵されたりします。
 特徴的なのは、他の病原性大腸菌と比べて高熱が出る事は少なく、あっても多くは一過性です。食中毒の治療の基本は、安静、水分の補給及び年齢、症状に応じた消化し易い食事の摂取です。経口摂取が不可能な場合には点滴によって水分と栄養の補給を行います。腹痛が強い場合には痛み止めの注射を行う事があります。
 抗菌剤を用いて細菌をたたくことが重要なのですが、O−157などの場合、抗菌剤の使用は、菌を破壊する事により、菌体内の毒素を放出させ、症状を悪化させる可能性がある為、静菌的と呼ばれる殺菌力の強くない抗菌剤を用い、下痢止めの使用はさしひかえます。

 食中毒予防の基本は、1.清潔 2.迅速 3.温度管理です。

 1.清潔(菌をつけない)とは、まず菌を食材につけない事が大切です。調理器具や台所の洗浄・除菌や十分な手洗いをする事、清潔な材料の確保などがあげられます。

 2.迅速(菌を増やさない) とは、材料は新鮮なものを使い、食中毒菌の増殖の時間を与えないようにします。また、調理したものは、早めに食べるようにします。

 3.温度管理(菌を殺す)とは、食中毒菌の多くは30〜45度でよく増殖し、80度以上では死滅する事から、食品を十分加熱することが大事です。反対に10度以下の温度では増殖しにくいので、冷蔵や冷凍で保存し菌の増殖を抑えます。

 また過労、睡眠不足が食中毒の引き金になります。基本的な体力が落ちていると、本来備わっている食中毒の菌に対する免疫力、抵抗力が落ちている為に、食中毒にかかり易くなっていると考えられます。
 これから蒸し暑い気候が続くと思いますが、どうぞお体に注意して食中毒を予防していきましょう。