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  小児科  又吉 由紀子  


 インフルエンザ情報に神経をとがらす季節がやってきました。小児科が最も忙しくなる時期です。前年度は流行が早く始まって大変でした。今号が出るころは、どうなっているでしょうか・・・。

 インフルエンザは潜伏期が1〜3日で、突然の高熱、頭痛、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛がみられます。診察時は目がうるみ、だるそうです。咳は遅れて出現し、発熱は通常4日程度です。診断は、だいたいは流行状況と症状から確定できますが、はっきりしない場合やけいれんで受診した場合は検査キットを使います。ただし病初期や、薬の内服後、予防接種をした人でも出にくいので、キットに頼りすぎない方がいいと思います。

 また、鼻腔と咽頭ぬぐい液では前者のほうがきちんと陽性に出るようです。 インフルエンザで恐いのは、お年寄りの肺炎と、小児の急性脳症です。他にもウイルス性肺炎、細菌性肺炎、中耳炎、筋炎、心筋炎、熱性けいれん、クループなどを合併することがあります(クループも要注意です)。

 インフルエンザ脳症は、発熱後1日以内にけいれんと意識障害が出現しおくれて全身の臓器障害が現れ、続いてショック・心肺停止となり死亡します。主に5歳以下の乳幼児に起こります。30%が死亡、25%が後遺症を残すとされ、後遺症なく回復するのは4割程度ということになります。非常に恐いです。

 インフルエンザ脳症では、熱性けいれんと違って「異常行動」が先に起こる割合が多いことがわかってきました。具体的には、「食べ物とそうでない物が区別できなくなる」「映像的な幻視・幻覚的訴え」「おびえ・恐怖感の訴え」  「怒ったり、泣き出したり、にやりと笑ったりする」「つじつまの合わないことを言ったり、大声で歌ったりする」などです。これは熱せん妄、つまり熱でうなされた症状と区別が難しいのですが、脳症の前触れである可能性も念頭において慎重に経過を見る必要があります。
 
 インフルエンザ脳症の治療は、抗ウイルス剤のほかにγーグロブリン大量療法、ステロイドパルス(+抗凝固)療法、AT3大量療法、低体温療法、血漿交換療法が今までに挙がり、最近シクロスポリン療法が出てきました。治療の有効性についてはまだ不明なものもあります。

 インフルエンザの治療では、抗ウイルス剤で症状が翌々日までに改善するのを目の当たりにするとやはり感動します。注意点としては、発症後48時間以内でないと効きません。A型にしか効かないアマンタジンはAでは割と効く印象ですが、副作用のふらつきなどから敬遠する医師もいます。AB共に効くオセルタミビルは便利ですが、小児では味の点で飲めないことがあります。体力のある場合は基本的な安静、水分摂取、栄養補給でもよいでしょう。

 解熱剤を使うべきかどうかで悩むことも多いと思います。ウイルス感染の初期にはなるべく下げないほうがいいけれども熱からの苦痛が強いときはやむを得ないという説明をしています。解熱剤はアセトアミノフェンを主に使います。ジクロフェナク、メフェナム酸、アスピリンは、小児のインフルエンザでは脳症やライ症候群との関連で使用禁忌となっていることを確認して結びとしたいと思います。