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泌尿器科科医師・気象予報士  浅山 緑  


 平成15年11月、9月下旬並みの気温24度の中、東京同際女子マラソンが行われた。高橋尚子選手は前半快調に飛ばしたが、終盤大幅にベースダウンし、黒人選下に抜かれ、2時間37分台でゴールした。この日関東の北には寒冷前線があり南下中で、そのため東京は南よりの暖かく湿った強い風の吹く季節はずれの天候であった。このような天気の中で、好タイムを出せないことは想像がつく。高橋選手は悪条件でのタイムを、気象条件の比較的よかった大阪、名古屋のマラソンの優勝者のタイムと条件抜きで比較され、アテネオリンピック出場はできなくなった。

 生気象学事典によれば、マラソンの至適気温は5度から15度であり、20度を越えると人体の有酸素運動能力の低下をきたし、体熱の産生が放散を上まわり、25キロから30キロ過ぎでペースの低下がみられる。気温が15度を越えると1度につきほぼ1分の割合でタイムが遅くなるという調査結果もあった。シドニーの金メダリストで一時は世界記録を保持したQちゃんでさえ、寒冷前線の南下という気象条件龍は勝てなかった。

 気象条件が精神状態や疾患に影響を及ぼすことが知られている。昨年19歳の綿矢りささんが芥川賞を最年少でとり、たいへん話題になったが、賞の元になった芥川龍之介は、その死が寒冷前線の通過と関係があるといわれている。前日までのうだるような暑さが前線通過で急変した朝、有能な作家は自ら短い生涯を断った。気候の変化が、病める神経に作用したと考えられている。
 
 尿路結石の痛みは、急な激痛であることが多いが、前線の通過や台風の接近で誘発されやすい。気温や気圧などの急な変化が、尿管の平滑筋の緊張を変化させるためとも考えられる。このように気象の変化などの影響を受けやすい疾患のことを気象病といい、気管支喘息が最も有名であるが、実は脳出血や狭心症・心筋梗塞などもこれに属する。