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形成外科  三木 啓稔  


 外傷の基本的な治療は、まず傷の閉鎖です。深い切傷を診て、縫合を考えない方はいらっしゃらないだろうと思います。外傷や熱傷における創の閉鎖において著しい皮膚欠損や、深達性のあるものでは治療の一方法として植皮が考えられます。そこで今回は主な植皮法について説明し、代表症例を提示したいと思います。



 外傷、熱傷等に植皮をすることは創面よりの不感蒸泄や蛋白、電解質などを含む体液の漏出を防ぎ、さらにエネルギーのロスをも防ぎます。植皮は biological dressing (生体材料による被覆)よりもはるかに有効なもので、損傷された皮膚を再建し外界からの感染を防止し生体を保護する機能があります。
さらに傷が広範囲に及ぶ場合は、植皮は全身状態の改善に最もよい治療と言えます。



 植皮法は、遊離植皮、有茎植皮の二つに大別され、病態に応じて使い分けます。遊離植皮とは、皮膚をいったん皮下組織から切り離して他に移植することであり、一方、有茎植皮は、その一部(茎)が皮下組織から離れずにここを通して血液の供給を受けるものです。
 遊離植皮は植皮片の厚さにより、分層植皮、全層植皮に分類されます。 有茎植皮は、局所皮弁、遠隔皮弁、遊離皮弁などに分類されます。これら後者の詳細はまたの機会に譲ることにし、今回は遊離植皮である分層植皮、全層植皮の二つについて述べたいと思います。 分層植皮、全層植皮の最も大きな違いは皮膚の厚さにあります。簡単に言えば、前者は厚さが薄く原則として真皮をあまり含みません。 一方全層植皮は、厚さが厚く真皮を全て含みます。



 分層植皮は全身のほぼどこからでも採取可能ですが、多くは、背部、臀部、腹部、大腿部、などの非露出部から採取します。皮膚欠損の範囲が広く皮膚が足りないときには、取った皮膚を1.5〜3倍、時には6倍のメッシュ(網状)にして使う事もあります。主に熱傷や外傷性の広範囲の皮膚欠損などに使用します。
 比較的生着しやすいのですが、移植場所によっては整容的に難がある事あります。伸縮性が乏しいために、顔面や関節部のように常に皮膚の伸縮する部位の皮膚移植には適しません。採皮部にも跡がやや残り、一部肥厚性瘢痕になる事もあります。
図1:新鮮熱傷皮膚壊死後の分層植皮術中写真
(70才代の男性、練炭による左下腿V度熱傷、 受傷後約二週間経過しての術中所見、臀部、背部より採皮)



 全層植皮は、主に鼠径部、鎖骨部、耳前部、足の内果部付近などから採取し、やや生着はしにくいのですが、整容的には比較的よいとされています。採皮部は縫合してしまうので傷跡はあまり目立ちません。分層植皮に比べ、皮膚が伸縮する顔面や関節部には適します。

図2:全層植皮術中写真
(80才代の女性、外傷性(動物咬傷)による 左下腿皮膚欠損の術中所見。そけい部より採皮)


図3:全層皮膚移植後、1ケ月後の状態(10才代の男性。 前腕部の皮膚悪性腫瘍切除後の皮膚欠損に対する全層植皮術。 術後、一部色素沈着があり、縫合部は瘢痕になっているが 比較的良好な状態。 皮膚の色調が落ち着くのに最低3〜6ヶ月程度はかかる。)


図4:熱傷後瘢痕拘縮の全層植皮術中写真
(小児。 右手掌部示指、小指にU度の 深達熱傷をきたした。瘢痕拘縮にて示指が伸展できない状態となり、受傷二年後に手を施行した。移植用皮膚は足底部より採皮した。)



 全層植皮にするか、分層植皮にするかは、皮膚欠損の部位、原因疾患、皮膚の状態、患者さんの年齢など、個々の症例に応じて総合的に判断し決定します。分層植皮と全層植皮の違いをまとめると、以下の表のようになります。

分層植皮と全層植皮の違い(鬼塚卓弥著 形成外科手術書 南紅堂より引用)



 詳しくは荒尾市民病院形成外科医にお尋ねください。