ホーム > 健康講座 > 健康のお話 > 転倒は加齢による正常な現象でしょうか?







神経内科 大嶋俊範  


 年をとると誰でも足腰が弱って転倒すると思っていませんか

 そんなことはありません。転倒は、加齢による正常な現象ではなく、様々な原因によって生じる現象です。身近に潜む転倒の危険性に、簡単ではありますが少し迫ってみようと思います。

多くの神経疾患や転倒は介護が必要となる主な原因です

近年の社会の大きな考え方は「寿命を延ばすこと」ことではなく、「健康寿命を延ばすこと」です。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間とされており、高齢者が健康で生き生きした生活を送れるように支援することの必要性が強く唱えられています。



平均寿命と健康寿命との差(2013年)


このように、平均寿命と健康寿命には10年程度の差があり、この差を埋めることがわたしたち神経内科の重要な役割のひとつです。その理由は、以下の介護が必要となった主な原因を見ていただくとわかるかと思います



介護が必要となった主な原因の割合(2013年)

 わたしたちは、脳血管疾患 (脳卒中等)、認知症、パーキンソン病などの診療にあたっています。そして、これらの疾患を抱えた人は、骨折・転倒を引き起こしやすくなります。健康寿命を伸ばすためには、これらの疾患を正しく理解し、骨折や転倒を防ぐことが重要となります。

(グラフは公益財団法人生命保険文化センターホームページより使用)



転倒の原因は内的要因と外的要因に分類されます

内的要因   外的要因
 ・体の状態の変化

−力が弱くなる

バランスが悪くなる

視野や視力が悪くなる

感覚が鈍くなる

・精神・心理面

−焦り、不安、緊張、興奮

注意力不足

認知症

・服薬状況

  −服用している薬の数や種類
・履物

−脱げ易いもの

滑りやすいもの

・床の状態や障害物

−デコボコ、(小さい)段差

電気コードや延長コード

カーペットなどの折れ端

滑りやすいマットなど

・明るさ

  −夜間などの足元が暗い

 転倒は、この内的要因と外的要因がいくつも重なり合ったときに起こることがほとんどです。たとえば、脳卒中やパーキンソン病でバランスの悪い人(体の状態の変化)が、電話を取ろうと急いでいたときに(精神・心理面)、延長コード(床の障害)につまずいて転倒することがあります。

 

まずは生活環境を整えましょう

・安全で歩きやすい靴を履きましょう。

・床や階段に散らかっているものを通路の外に片付けましょう。

・コンセントを増設し、電気コードや延長コードを出入口の上に留めましょう。

・通路上に伸びているコード類を撤去しましょう。

・固定されていないカーペットなどは取り除くか、テープなどで固定しましょう。

・浴室や台所では、滑らないマットを使用しましょう。

・照明器具を増やしたり、その種類を変えたりしましょう。

・照明スイッチを手の届きやすいところに付け替えましょう。

・夜間のトイレまでの動線は適切な照明を設置することが、特に重要です。

−照明をつけて、安全にトイレまで移動しましょう。

 

 それでも転倒を繰り返す人は、病院を受診しましょう

環境を調整してもなお、転倒を繰り返すような人や、転倒までしなくともバランスに不安のあるような人は、何らかの病気を抱えている可能性があります。

わたしが診る神経内科疾患の可能性をはじめ、循環器内科、整形外科などその原因は多岐にわたります。薬の副作用で、転倒を繰り返している可能性もありますので、まずは、かかりつけの先生にご相談ください。

ご相談できるかかりつけの先生がいらっしゃらない場合には、神経内科を予約、受診していただければ、診察や検査の結果、必要に応じ、他の診療科の先生にも相談してまいります。

 繰り返しますが…、転倒は、加齢だけでは起きません。

転倒を繰り返す人やバランスに不安のある人は、その原因を探り、治療をすることで元気に過ごすことのできる健康寿命を延ばすことができるかもしれません。