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                            臨床研修医 久保 博之   


 みなさん、こんにちは。荒尾市民病院研修医の久保博之です。相変わらず暑い日々が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?

 これだけ毎日暑いと、さすがに体力を奪われてしまいますよね。いわゆる夏バテです。そんなときにはやっぱり精のつく食べ物を...ということで、先日お休みの日に熊本駅から「かわせみ やませみ」に揺られて、有名な人吉の「上村うなぎ屋」までうな丼を食べに行ってきました。さすが うな丼で全国に名を轟かせる名店の味!! うなぎは分厚く、ふっくらやわらか、口に入れればほろほろと身がほどけていく絶品の丼でしたよ。お腹は満腹、しかし結構なお値段で懐はだいーぶ寒くなりましたが、単純な私は急に元気いっぱいになり、大満足でスキップしながら??荒尾まで帰ってきました。県北の荒尾から県南の人吉までかなり距離はありますが、この夏ぜひ人吉まで足を運ばれてみてはいかがでしょうか。列車から球磨川を望む雄大な景色にも心洗われますよ〜。

 さて、閑話休題。この時季、みなさんはご自宅で毎日エアコンを利用されていると思いますが、このエアコンなどが原因となる季節性の病気があるのをご存知ですか?

 「え〜そんなの寝冷えとか夏かぜでしょ?」って思いますよね。確かに夜、エアコンをかけっぱなしにして、おへそ丸出しで眠ったらきっとそうなるでしょう(笑)。だいたい初夏から秋の中頃くらいの期間に、咳が長引くような症状が毎年起きているようであれば注意が必要です。「トリコスポロン」と呼ばれる真菌(カビ)が放出する胞子を吸い込むことで発症する「夏型過敏性肺炎」の可能性があります。

 "過敏性肺炎"というのは、私たちの生活空間にある"ちり"や"ほこり"を繰り返し吸い込むうちに、人間が生来より持ち合わせているアレルギー反応を起こして発症してしまう肺炎のことを言います。

 
 
 昔々、それはそれは太古の昔、ヨーロッパ各地で酪農業を営んでいる人たちが牛の飼料である枯れ草を扱うときに咳、呼吸困難、発熱などの症状を引き起こす「農夫肺」とよばれる病気が見つかり、"過敏性肺炎"という考え方が確立されました。その後、居住環境や職業環境にあるさまざまな物質による過敏性肺炎が次々と発見され、現在では50種類以上の過敏性肺炎が知られています。「夏型過敏性肺炎」は、その一種です。 
 「トリコスポロン」は古い家屋で湿気が多く、日当たりや風通しが悪い場所で発育します。白っぽい色をしたカビで、古くなった木材を好みます。室内だと台所のシンク下や浴室などの水回り、カーペットや畳の裏などが発生源となることが多いようです。

 「トリコスポロン」の胞子はとっても小さいので、エアコンなどの風で部屋中を浮遊しやすく、鼻や口から吸い込まれ、肺に侵入してしまうのです。カビの多くは温度25度以上、湿度60%程度で発生し、湿度が80%を超えると急激に増殖するとされています。エアコン使用中には、エアコン内部の湿度が90%以上に達して水滴も付着します。こまめに清掃していないと、カビの発生源になってしまいます。エアコンが胞子の運び屋になってしまうんですね。

 夏型過敏性肺炎はご自宅を掃除される機会が多く、在宅時間の長い女性がかかりやすいようで、女性の患者さんは男性のおよそ2倍となっています。

 
 症状としてはしつこい咳が続いて、息切れや微熱、倦怠感をともなうことが多いです。不思議なもので、旅行などで原因となるカビが浮遊している家から離れると症状が軽くなり、帰宅すると再び症状が出現します。また、秋が深まり、「トリコスポロン」が増殖しなくなると、咳症状も自然に消えてしまうのが特徴的です。

 そんなわけで、この病気にかかった方は夏が過ぎると自然と症状がなくなるので、病院を受診せず放置されていることもありそうです。しかし、この症状が毎年出現し、5年も経過すると肺の組織が硬くなって縮んでしまう「肺線維症」へ移行してしまう危険性があります。この状態にまで進行すると、治療を行っても元のきれいな肺に戻すことはできなくなってしまいます。万一このような症状があったら、必ず病院を受診するようにしてくださいね。

 
 治療としてはまず、原因となるカビの除去が重要となります。

水回りや畳などのカビを除去したり、エアコンのフィルターを掃除するだけで症状が改善したり、治癒に向かったりします。

しかし、清掃だけで原因となるカビを除去できない場合は、おうちを建て替えたり、引っ越したりする必要が出てきます。「えぇっ!おおげさな!!」って思うかもしれませんが、本当です。それほどこの病気を治すには、徹底してカビから離れることが重要になってくるんです。中等症以上ではステロイドと呼ばれるお薬を投与しますが、慢性化してしまうとなかなか治りづらくなり、呼吸不全状態となってしまいます。そうならないためにも、早期発見、早期治療が必要であると言えそうです。

 

 
少々おどかしてしまうようなお話をしてしまいましたが、この夏少しでも体調不良を感じることがあったら、ためらわずに病院を受診してくださいね。まだまだ暑い日々が続きますが、残りの夏を楽しくお過ごしください!


※余談です:夏型過敏性肺炎の原因が「トリコスポロン」であることを解明したのは、熊本大学医学部第一内科(現、呼吸器内科)なんですよ〜!すごいですよね!!